寧日雑考 第30号 渋滞学 2017.08.20
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唐突だが、私の畢生課題13のうち3つは、「自然・哲学・数学」の理解である。
さらに「自然」は「宇宙・生命・意識」の3つの細目に分かれる。
なお私の定義は、畢生課題=生涯道楽 だ。
道楽なので、中休みしながら時に熱中し、その過程自体をも面白がっている。

自然・哲学・数学の理解進展の手段は、主として書籍による独学だ。
いくつか本を読んで、

 平易な言葉で一般庶民に説得力ある解説ができる人間には本物の知性がある。

と了解した。
そして現代日本の自然・哲学・数学の三大知性は、解剖学者の養老孟司 氏、
哲学者の野矢茂樹 氏、数理物理学者の西成活裕 氏であると確信し、
私淑している。

西成氏は「渋滞学」の創設者である。
私が「渋滞学」を知ったのは10年ほど前だ。帰省時の高速道路の渋滞に
辟易していた私は、たまたま手にした本「渋滞学」を読み、深く感服した。
先月2017.7.25、その西成氏の講演を聴講する機会に恵まれた。
講演では好奇心を揺さぶられ、その後の懇親会は至福の時だった。

演題は「シゴトの渋滞学〜仕事の効率をあげるコツ〜 」である。
西成教授が創設した「渋滞学」の研究で培われた知見を元に、
どのようにしたら仕事の効率を上げられるのか、を解説するもので、
現象の本質を取り出し、数学によって証明された理論を裏付けとして、
シゴトにおける渋滞の解消法を分かり易く解説する内容だった。

渋滞現象は数式で表現され、グラフ化で視覚的にも再現される。
つまり、渋滞学は数学で証明された真理に基づく実学である、ということだ。
洪水、火事の延焼、非常口への殺到、レジ待ち行列、インターネット通信速度、
蟻の行列、アルツハイマー病に関わる軸索のタンパク質輸送、血圧、業務が
回らないこと、など、全て本質は同じである。だから応用範囲は極めて広い。

例えば、高速道路の渋滞は、メタ安定状態から一気に渋滞に移行する。
メタ安定状態とは水の過冷却(物理的刺激で一気に氷になる状態の水)と
同じ現象である。高速道路の場合1kmに25台(車間距離40m)がメタ安定状態で
この限界を超えると10分程度で渋滞が、あっという間に、発生する。
このほか、ムダの定義、全体最適を実現するための「あるべき姿」を洞察する
フォアキャスト志向、「言葉つなぎゲーム」など知的興奮連続の90分だった。

講演会の主催は某民間企業の取引業者が会員となっている協力会で、
その民間企業の業績発表会の後に西成氏の講演が行われた。従って、
出席者の99.9%は会社命令による参加、つまりは業務である。
私は、業務もさることながら、十年来興味のあった「渋滞学」の著者と
直接会話することを一番の目的にしていた。

講演後の立食式の懇親会では、西成氏と、渋滞学、無駄学、逆説の法則、
役に立つ数学など著書に関して、質問・疑問を含めて意見交換ができた。

特に、近著「逆説の法則」のあとがきには、

 長期的視野の大局的な提案を本書には随所に書いたが、
 少し残念だった のは、経済と金融に関する議論が時間と
 紙面の都合により十分できな かったことである。
 こうした課題の検討はまた今後の機会に譲りたいと 思う。

とあったので、西成氏に
「まともな数学で 是非、経済をモデル化し、正しい経済理論を
 構築してほしい、期待しています」
と直接伝えた。忙しい氏なので大変だと思うが、実現したら
この上もなく嬉しい。
世間に跋扈する、それらしい数式を得意げに使いながらも、
実態経済を何一つ説明できない経済学者、御用学者、評論家を
駆逐する契機になるだろう。

養老氏(雑考400 206号,210号,212号,224号,257号,325号,364号 )、
野矢氏(雑考400 369号 )、西成氏(寧日雑考 30号)の講演を聴いて、
直接質問し、記念写真を撮り、握手できた私は幸せ者である。

だから 畢生課題=生涯道楽 は、やめられない。
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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://www.geocities.jp/monburu/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした雑文です。)
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