寧日雑考 第22号 赤字財政=打出の小槌 2017.01.15
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赤字財政は打出の小槌である。
俄には信じがたいだろうが、赤字財政は、悪どころかその正反対で、
安定した経済維持・繁栄に必要不可欠な政府の負債である。
赤字という文字が民間企業の累積損失を想像させ、誤解を招く原因の
一つになっているのだろう。
言うまでもなく、国家と民間企業・家計の収支を同列に論ずることは、
幼稚で見苦しい誤りなのだが、一見すると分かりやすく直感的なので、
財務省や似非知識人は好んで使っている。
赤字財政=打出の小槌 を完全に理解するには、簿記三級程度の
知識は必要だ。難易度は商業高校の卒業に必須のレベルである。
但し、赤字財政=打出の小槌 が成立するには、次の2つが大前提である。
(1)民主国家として安定していること
(2)国富を保有していること
国富とは、国民が日常生活を送るための財・サービスを自国内で
産み出せる力で、資本・労働・技術を指す。
より具体的に言えば、秀逸な 生産設備・国民・生産技術 である。
そして今の日本国にはこれらが揃っている。(食料とエネルギーは交換入手)
これは、寧日雑考 第17号(シン・ゴジラ)に書いた通りである。
さて、赤字財政=打出の小槌 は、僅か1行の仕訳で説明できる。
次の通りだ。
国債発行
無(ゼロ) → 貨幣 / 負債
↑ ↑
民間が潤う 政府が負う
上記の通り、ゼロから貨幣が生み出される。即ち、打出の小槌である。
言葉で書けば次の通りだ。
(1)日本国政府が国債を発行し、それを民間が買う。(現行4割は最終的に日銀)
(2)政府は民間から入金された国債代金を元にインフラ整備ほかを民間に発注する。
(3)政府から受注を受けた民間が潤う。
以上である。
因みに、日本の国債は未だ民間貯蓄で賄われているので安全だ云々、
という主張は、単なる譫言でなんの意味も無い。
国債発行残高がどうしても気になるのなら日銀が全部買い取れば良いだけの話だが、
現実には日本国債は安全資産なので、市場に流通しなければ民間が困るだろう。
疑い深い方のために言うと、国債残高に関する事実は以下の通りである。
国債残高838兆円(※1)のうち、実に4割強の353兆円(※2)は
既に日銀の保有となっている。そして今も、年間80兆円規模で
日銀が国債を買う(マネタリーベースを増やす)としている。
なお日本国債が安全資産であることは、寧日雑考 第4号(日本国債は安全資産)
に書いた通りだ。
つまり、国債発行残高など、どうでも良いのである。
(※1)財務省のホームページ
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/004.htm
のH28年度末までの公債残高を見ると、838兆円とある。
(※2) 日本銀行のホームページ
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
の政府債務 欄にある、
↓ 時系列データ・注釈等
を押して、ニュース欄に移動したところに
1/12(木)
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高 [XLSX 27KB]
がある。このエクセルを開いて合計を計算すると
3,530,896億円 つまり、353兆円だ。
もう一つ重要な要素として、国家権力による徴税機能がある。
これは過度なインフレを抑え、また格差を縮小させる手段となる。
なお、上記(3)の続きは次の通りである。
(3)政府から受注を受けた民間が潤う。
(4)日本国の税収が増える。
(5)国債発行及び国債発行残高が減る。
さて、現実はどうなっているか。財務省主導の財政均衡論がまかり通り、
上記と全く逆の経済運営が続けられて来た。
悪夢は消費税5%増税から始まった。まさに愚の骨頂、貧乏になるために
一所懸命苦労してきたわけだ。失われた20年。
その結果は、寧日雑考 第15号(潜在成長率2%)に書いた通りである。
この滑稽な悲劇は、現在の主流派経済学者が、信用貨幣を正しく理解できない
無知で、今も変わらず無能であることに由来する。
また、分かり易い説明が評判とよく言われる池上 彰 氏の、国家財政を
家計に例える説明などは最低最悪の屑話で、犯罪的ですらある。
以上、これまで悩まされ、
雑考400 第240号 経済学の効用
雑考400 第344号 構造改革なくして…
などで経済学のダメ加減を実感してきた私としては、長年の疑問が氷解し、
今後の進むべき政策を論理的に正しく明確に理解できたことは嬉しい。
あとはまともな政府が、世間に流布している財政破綻論、財政均衡論を
撃破粉砕し、まずは地震に強いインフラの整備、老朽化した公共建造物の更新、
全国を結ぶ整備新幹線、高速道路網、リニア新幹線その他の社会資本の充実を
図ること、国民が安心できる国防政策・エネルギー政策を策定し実行すること、
そして基礎研究への長期的な投資を続けること、から始めなければならない。
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