寧日雑考 第15号 潜在成長率2% 2016.08.11
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【算数の問題】
100万円を年利2%(複利計算)で20年間預金する。20年後、元利合計でいくらになるか?

答えは、約149万である。 1,000,000×(1.02の20乗)=1,485,947円

わずか年2%の成長でも20年後は、約1.5倍になるということだ。

 

 

【日本経済の問題】
この20年で、日本のGDP(国内総生産)は何倍になったか?

答えは、0.99倍である。 平成6年=495兆円 平成26年=489兆円 ▲6兆円

つまり、成長どころか縮小・後退した、ということだ。

内閣府発表 2014年度国民経済計算 国内総生産勘定(Excel形式:63KB)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h26/h26_kaku_top.html

同上HPの国内総生産勘定データ(Excel形式:63KB)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h26/tables/26a1_jp.xls

 

第394号 経世済民2に書いた通り、国民経済計算「三面等価の原則」によって、
GDPが減れば、所得も減る。つまり平均給料も減っているのである。
正に失われた20年である。
念のために書くと、GDPとは消費するモノやサービスの価格を集計した
数値である。つまり実体経済の統計だ。
だから、株価や土地、債権の価格などの金融経済とは直接関係しない。

 

 

潜在成長率とは、資本・労働を普通に能力通り使ったときの成長率である。
誰でも毎年多少なりとも能力が上がるし、技術の進歩もあるので
1年に2%くらいは成長するのが普通である。
実際に、1990年代の日本経済の成長率は平均するとほぼ2%だった。

それが上で見たとおり、日本経済は失われた20年で、成長ゼロである。
これはまぎれもなく、経済政策が大失敗した結果だ。
もちろん消費税増税も大失敗政策の一つである。

無能な人間が政策を考え、無能な人間がその政策を実行すると、こうなる、
という典型的な見本だろう。
尤も、格差が拡大し続けているので、政策を考え、実行する人間は、
高所得層に居るので、痛くもかゆくもない。
バカを見るのは、私も含めた大多数の馬鹿で無能な日本国民ということになる。

余談だが、米国のトランプ現象は日本の数年先を走っているのかもしれない。

 

 

日本が失われた20年をやっている間に、中国はGDPを大きく成長させた。
 2006年 2,793(10億米ドル) → 2015年 11,212(10億米ドル)
と実に4倍に成長させている。
単純に1ドル100円で換算すると、279兆円から1121兆円だ。(H26日本のGDPの2.3倍)

JETRO日本貿易振興機構
https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/stat.html

同上HP 基礎的経済指標(10年分年次統計と2年分月次統計)エクセルファイル(52KB)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/cn/stat_01/at_download/file/china_stat.xls

リオオリンピック、日本は金メダルラッシュだ、などと浮かれている間に
中国に尖閣諸島を乗っ取られてしまうだろう。
そして次は沖縄だ。
百田尚樹 氏の「カエルの楽園」そのままの展開である。悪い冗談としか思えない。

 

 

ダメ押しで書くと、2013/4/5の日経記事に、
黒田日銀総裁が異次元の政策で2年間で2%の物価上昇率を目指す、というのがあった。
いわゆる異次元緩和だ。この2%は、潜在成長率を意識した数字だろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDASFS0401T_U3A400C1MM8000/

 

ところが、約3年半が経過した直近の総務省統計局の発表(2016.7.29)では、
消費者物価指数は、総合▲0.4%、生鮮食品除く総合▲0.5% というていたらくである。
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm

 

完全な失敗であり、デタラメな経済理論に基づいて3年半をムダにしたことが
証明された訳だ。それにもかかわらず、誰も責任を取っていない。
一般企業では、結果を出せない人間は、無能と言われ、責任を取らされるが、
日銀は民間企業ではないので、無能でも責任を取る必要が無いのだろう。
まったくお先真っ暗である。

 

もう一つダメ押し。今朝(2016/08/11)の日経朝刊に、財務省発表記事として
「国の借金」1053兆円でGDPの2倍、1人当たりで829万円になる、という
いつもの、くだらない、扇動記事が出ていた。
http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS10H20_Q6A810C1EE8000/

債務者は政府で、債権者は大多数が日本国民である。
「国の借金」と言う言葉自体がおかしい。
更に言えば、100%円建ての国債なのだから、日銀が円を発行して
買い取れば済む話で、そもそも財政破綻など起きようがないのである。


こんな自明のことが、一流と目されている専門の経済新聞に
堂々と書かれている現実が、あまりに情けない。

  

これら一連の根本原因は”通貨発行権”を日本政府が持っていないことにある、
ということを最近ようやく学んだのだが、続きはまた書く。

書いているうちに興奮し下品な言葉が多く出てしまった。ご容赦願います。
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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です。)
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