寧日雑考 第76号 身体はセンサー 2022.04.27
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映画「ブレードランナー2049」のなかに、
主人公の恋人であるジョイ(AIの3Dホログラム)が、
生身の娼婦の体にシンクロして主人公と交合する場面があった。

ヒトのみならず、AIまでもが、バーチャルな心の繋がりだけでは
満足できない、ということだろうか。

緊急事態宣言で在宅勤務が拡大した時にWEB呑み会が流行した。
暫くは対面の代替になったようだがすぐに廃れた模様だ。

この二つは通底していると思う。

最近、メタバースという言葉を頻繁に見聞する。
フェイスブックがメタに社名変更したという報道もあった。

ゴーグルのようなカメラを被り眼前に再現される仮想空間内を
自分の分身(アバター)で動き回り、様々な活動をするらしい。

ゴーグルを通じて、目・耳を経由する視覚・聴覚で世界が再現
されるのだろうが、これでは仮想映像の域を出ないと思う。

分析哲学に「水槽の中の脳」という思考実験がある。

手術であなたの脳が頭蓋骨から取り出され、培養液に浸される。
脳から出る神経は外部コンピュータに精巧に繋がれており、
コンピュータからの信号によって、あなたの意識(脳内)では、
手術前と同じ現実が続いている、という設定だ。

映画「マトリックス」の世界に少し似ている。

寧日雑考 第51号 ソアリン に書いたように、触覚、嗅覚、
そして加速平衡感覚が伴えば、現実感は一気に高まるだろうか。

いずれ現実人生とメタバース人生が両立する時代が来るのか。
30年前はSFの話だったので興味はある。

生きるとは、五感を通じて自分の命を維持することでもある。
生身の身体は、内臓感覚も含めてセンサーの塊と言って良い。

人生は全て身体が基本。

自明であるが再認識した次第だ。

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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です)
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