寧日雑考 第98号 ロボトミー的? 2024.2.10
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1949年のノーベル生理学医学賞は2件あり、そのうちの一つは、
ポルトガルの神経科医 アントニオ・エガス・モニスが受賞した
「ある種の精神病に対する前額部大脳神経切断の治癒的価値の発見」
だった。

これは、"脳を壊すことによる精神病の症状の改善"を発見した、
というものだ。(外科的に脳を壊すとは恐ろしい所行である)

統合失調症患者にこの処置をすれば、つまり患者の前頭葉を壊すと、
患者の行動が穏やかになり、看護し易くなったらしい。

前頭葉の破壊手術は、ノーベル賞の治療法としてロボトミー手術、
あるいはロイコトミー手術と呼ばれ1930〜1950年代に行われた。



昔、「カッコーの巣の上で」という映画があった。

主人公は刑務所での強制労働を逃れるために狂人を装い精神病院に入った。
そして、その病院の厳格な管理体制に反抗し、従順な他の患者を巻き込んで
騒動を起こす。その結果、主人公はロボトミー手術を受けさせられる。
手術によって主人公は、無気力な、意志を持たない廃人となる話だ。



前頭葉は、意思決定・行動や感情の制御・言語理解・学習と記憶などに
関わる重要な脳神経細胞である。いわばヒトの人格そのものと言って良い。

ロボトミー手術は大事な前頭葉を壊す手術である。
ヒトの人格を壊す、つまりはヒトを壊すという、なんとも恐ろしい手術だ。

ノーベル賞の権威は、ヒトを壊す恐怖の手術を正当化したと言える。



2024.1.14日経朝刊に、福岡伸一氏のコラム「フレームシフト」があった。

福岡氏が、科学誌Natureに掲載された英ケンブリッジ大学の研究者の論文
 「シュードウリジン修飾mRNAはリボゾームで一塩基のフレームシフトを誘発する」
を読んで書いた記事である。

私の責任で要約する。

「「「
シュードウリジン修飾とは、新型コロナウイルスの画期的な
ワクチンである「mRNAワクチン」の開発に使われた手法だ。

開発者のカタリン・カリコ氏は、その功績で2023年の
ノーベル生理学・医学賞に輝いている。

従来、ワクチンは全てタンパク質で作られていたが、ウイルスの培養、
タンパク質の精製、安全性の確認などで開発に膨大な時間がかかる。

そこで代わりタンパク質の設計図であるmRNAを使えば良いが、
mRNAを実験動物に投与すると異物と認識され、発熱や炎症が起こり、
ワクチン効果を発揮しない。mRNAもすぐに分解されてしまう。

カリコ氏たちは、自己の細胞内mRNAは、その構成ユニット(塩基)
のうち、ウリジンが化学修飾(メチル化というタグが付される)
されていること(これをシュードウリジンと呼ぶ)を突き止めた。

つまりメチル化の有無が自己と他者を峻別していたことを発見した。

そこでmRNAワクチンを試験管内で人工合成する際、ウリジンの代わり
にシュードウリジンを使った。これを脂質の膜にくるんで投与すると、
細胞内に届きワクチンとして立派に機能することが判明した。

mRNAは迅速に量産可能で、配列を書き換えれば変異体の出現にも
迅速に対応できる。

かくしてコロナ禍で大混乱をきたした世界を救った。

この成果を見て、私(福岡氏)を含め、科学者たちは、
シュードウリジン修飾mRNAは、細胞内で正しく翻訳され、
ウイルスタンパク質を生産するものと信じていた。

ところがそうではなかった、というのが今回の論文の趣旨である。
」」」

 シュードウリジン修飾mRNAは、細胞内で正しく翻訳され、
 ウイルスタンパク質を生産すると信じていたが、違っていた。

とは、どういうことだろう。
正しく翻訳されない時、どのようなタンパク質が作られるのだろうか。


記事は続く。

「「「
mRNAの情報は、細胞内のリボゾームというタンパク質合成装置上で
アミノ酸の連鎖、つまりタンパク質に翻訳される。

このときmRNAの3塩基が一組になって(コドンという)、ひとつの
アミノ酸を指定する。コドンの連続を読み枠(フレーム)という。

mRNAには開始コドンと終始コドンがあってタンパク質合成の開始点と
終了点が決定される。

しかし、本論文によると、シュードウリジンが存在するとリボゾーム
での翻訳ミスが起こりやすくなり、塩基を一文字読み飛ばしてしまう。
これがフレームシフトである。

そんなことが起きれば以降の翻訳コドンがすべてずれてしまって
全く別のタンパク質が作られてしまう。

実際、mRNAワクチンの投与を受けた人の抗体を調べてみると、
フレームシフトの結果生じたと考えられる非ウイルスタンパク質
に対して免疫系の初期反応が起きていた。

想定外のタンパク質が体内で作られることは、アレルギーや
自己免疫抗体を誘発するなどのリスクにも繋がりうる。
」」」

シュードウリジンが存在すると、リボゾームでの翻訳ミスが
起こりやすくなり、その結果フレームシフトが発生して、
"狙っていたタンパク質とは全く別のタンパク質が作られてしまう"

そして、体内で想定外に作られた非ウイルスタンパク質は、アレルギーや
自己免疫抗体を誘発するなどのリスクに繋がる可能性がある、と言う。

これは、実に恐ろしいことではないか。

日本ではブースター接種と称し、何度もmRNAワクチンを接種させられた。

3回接種証明がなければ旅行にも行けない状況になり、私も3回打った。
高齢者によっては6回も受けた人が居ると聞く。

日本のマスコミでは報道されないが、欧米では既にmRNAワクチンを
接種しない状況だ、と聞いたことがある。


2023年のノーベル生理学・医学賞に輝いたシュードウリジン修飾を
使った画期的な新型コロナウイルスの「mRNAワクチン」は、
体内で想定外のタンパク質を作りだし、それによってアレルギーや
自己免疫抗体を誘発するリスクがあるという。

日本のみならず世界中の人間が接種した「mRNAワクチン」が、
ノーベル賞の権威で一時もてはやされ、その後、弊害が明るみになり
評価が一転した「ロボトミー的」結末にならないことを切に願う。

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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です)
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