寧日雑考 第85号 衰退国ニッポン 2023.01.29
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このところ、失われた30年という言葉をよく聞く。

バブル崩壊後の1990年代始めから30年経った現在でも、
賃金も株価も当時のままで殆ど変わっていない、ということだ。
30年間の平均経済成長率は、ほぼゼロ%だろう。

主要国の状況はどうなのかと思い、下記のホームページで
数字を拾って比べてみた。

https://ecodb.net/area/

比較のため、国ごとに、その国の通貨での
1990年と2022年のGDPを並べて、
32年後に何倍になっているか? を計算した。

結果は下記の通りである。これを見て青ざめた。

【2022年GDP÷1990年GDP】
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国名  実質GDP(倍)  名目GDP(倍)
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日本    1.3    1.2
アメリカ  2.1    4.2
カナダ   2.0    4.0
ドイツ   1.5    2.9
フランス  1.6    2.5
イタリア  1.2    2.6
イギリス  1.8    3.8
中国   15.9   64.9
韓国    4.3   11.0
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中国、韓国が実質GDP・名目GDPともに
先進7カ国を大きく上回っているのは理解できる。
日本も、ごく僅かにGDPが増えてはいる。

恐ろしいのは、日本だけ、名目GDPが、
実質GDPを下回っているという事実だ。

しかも、名目GDPは日本のみ僅か1.2倍で、
他国は少なくとも2.5倍以上ある。

これは何を意味するのか?

名目GDPから物価上昇の影響を除いたものが
実質GDPなので、日本だけ物価が下がっている、
つまりデフレということだ。

名目GDPは、実際に貰っている賃金であり、物価である。

日本以外の国では賃金が2.5倍以上になっているのに、
だだ1国、日本だけが30年間で賃金が上がるどころか、
逆に下がったということだ。

これが青ざめた理由だ。

賃金は上がっていないが、物価も上がっていないので、
貧乏になりつつも何とか生活している、ということだろう。

一人当たりGDPも、人口の大きな変動が無ければ
同じ傾向になる。実際に上の表とほぼ同じだ。

2021年のドイツの人口は8210万人、
日本は1億2550万人で、日本の方が1.5倍以上も
人口が多い。

しかし、もう少しでGDPがドイツに抜かれ、日本は
GDP世界第4位になるらしい。(米>中>独>日)
日本経済の低迷を見れば宜なるかな、である。

経済成長がなくても幸せな生活はできる、とか、
賃金が上がらなくても、デフレならモノの値段も上がらない
から、デフレはそんなに悪いことではない、等というのは、
世界の情勢を知らない愚か者の発想である。

このような状態が更に10年20年続いたら日本はどうなるか。
私の孫の世代では、日本は世界でも賃金が安い、お買い得な国に
なっているだろう。

衰退国ニッポンである。

なぜ、こんな事になってしまったのだろうか。

(1)日本が発展する舵取りができる政治家
(2)日本が発展する政策を提案できる官僚・経済学者
(3)上記(1)を選ぶ為の適正な世論を形成できるマスコミ

この3つがあれば、少なくとも他の先進国並の
経済発展ができた筈だ。
しかし、残念ながら日本にはどれ一つとして無かった。

この責任は、還暦を迎えた私と、私の少し上の世代にある。
忸怩たる思いだ。

『国債残高1000兆円超で、このまま財政赤字が続けば
日本国は財政破綻する、だから増税が必要だ』
などという世迷い言に騙されてはならない。

国債は借金ではないし、税金は財源ではない。

大事なのは、実体経済を健全に回すため次の3つ、

(ア)雇用(失業率の低減)
(イ)技術開発力(人的投資)
(ウ)生産力(設備投資)

である。

実体経済が健全なら、金融経済がまともになる道も開ける。

増税は、上記(ア)(イ)(ウ)を毀損する最悪の政策である。
それは消費税増税や復興税増税で実証済みだ。

最近言われている防衛費や少子化対策のための増税など、
愚策以外のなにものでもない。

失われた30年という、同じ過ちを繰り返すだけだ。

明快な解決策は、実は眼前にある。有権者一人一人が
曇りのない目で見て、素朴に考える力を持つこと。

これが失われた30年を繰り返さない唯一の道である。



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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です)
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