寧日雑考 第28号 「輿論」考 2017.06.04
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私は給与所得者になって32年経過した。
32年前、某大手ハム食肉会社の新入社員の新人研修で
講師である日経新聞社の人間から、
「社会人にとって日経新聞は必読」と指導を受けた。
その時は、事実9割、宣伝1割くらいだろうと思った。

そう言われたものの、日経新聞はなかなか読み熟せず、
密かに劣等感を持ち続けていた。

紆余曲折の末、私は現在そこそこの規模の卸売業の会社に
在籍している。その会社で日々、営業や管理の人間と話をして、
つくづく感じることがある。それは、

 毎日きちんと日経新聞を読み、国際情勢、経済事象を
 自分の頭で考えている人間は、ほとんどいない。

ということだ。
テレビ専門のコメンテーターが喋っているような、通り一遍の言葉
しか出てこない。

私は経済の仕組みをいくつかの書籍で学び、懸命に考えた結果
日経新聞の経済音痴ぶりを確信して、暗澹たる思いをしている。
これについて自分の判断が誤っていないか確認するため、意見交換
したいのだが、実現できず残念である。

私が関わる人間は、自分も含めてレベルはたかが知れており、
トップの人間では無いのだが、それでも、そこそこの上場企業の
従業員の、バリバリの現役世代の人間にして、これである。
日々業務に忙殺されている、または他の心配事に頭がいっぱいで
新聞どころではない、ということもあるだろう。

 日本は電車の中吊り広告(新聞の週刊誌広告)とワイドショーで
 輿論が形成されている。

と見聞したことがある。残念だが、あながち嘘では無いだろうと感じる。

完全に思考停止状態である。
思考が停止している日本人にとって、日本は平和で安全な国である。

しかし、世界は日夜、動いている。
今、先進諸国ではグローバリズムからナショナリズムへと潮流が変わる
節目にある。
英国のブレグジット、仏国の大統領選の争点、米国のアメリカファースト
みな同根であろう。

安全保障を巡る環境は数年前に比べると大きく変わっている。
・朝鮮民主主義人民共和国は、頻繁に長距離ミサイルを飛ばし、
 日本海に落としている。
・朝鮮民主主義人民共和国は、核弾頭の開発も進めているようだ。
・中華人民共和国は、南シナ海の岩礁を違法に埋め立てて、飛行場と軍事基地を作った。
・中華人民共和国は、国防動員法を守る義務を負う人民を世界中に
 外国人労働者として移住させ、定着させるという「洗国」を進めている。
・中華人民共和国のGDPは、この20年で279兆円から1121兆円へと4倍に増えた。
 そして今も、毎年の経済成長率の目標は7%である。
・一方で日本は、GDP500兆円のまま増えていない。(第15号 潜在成長率2%

日本は自然災害大国である。
・世界の大地震の20%、世界の活火山の10%は日本列島にある。
 (日本史の謎は「地形」で解ける<文明・文化篇> 竹村公太郎 氏 著書より)
・毎年台風で土砂崩れ、洪水等の大災害が発生している。
・豪雪、豪雨、旱魃、冷夏もある。(ポテトチップスの品薄は記憶に新しい)
・戦後復興期に作られた道路、橋梁、ビル、下水道など社会インフラの老朽化が激しい。

日本は化石エネルギー小国である。
・だからエネルギー政策は、難しく、深刻な課題である。
・化石燃料か、核燃料か、太陽光・太陽熱・風力・水力・地熱などの
 再生可能エネルギーか?
・私は原発事故以来、日本のエネルギー問題に悩んでいたが、最近、
 竹村公太郎 氏の著書で、日本の気候と地形に根ざしたダムと水力発電が、
 とてつもない可能性を秘めていることを知り、光明が見えた。

日本は技術立国で、日本人は毎年のようにノーベル賞を受賞している。
・しかし、これは過去の遺産を食いつぶしているだけ、と大隅教授ほかの
 ノーベル賞科学者が警告している。
・企業は目先の利益、キャッシュフロー経営、短期の成果主義で動き、
 長期的観点に基づく投資をやらない。
・国も財務省の誤った財政問題認識から、基礎科学研究に金を出さない。

日本はプライマリーバランス黒字化という狂った目標で、アルゼンチン、
ギリシャが歩んだ亡国へ続く、同じ道を進みつつある。

日本は労働力を確保するために、優秀な外国人を移民として受け入れる、
という危険な愚策を、世界的な潮流から周回遅れで進めている。

貧富の差、収入格差は広がり続けている。
・世界の富豪トップ8名の資産は、世界人口半分が持つ資産と同じである。
・世界の上位1%の富裕層が、残る99%の合計よりも多くの富を保有している。
・日本の貧困率は発展途上国並みとなっている。

数えればきりの無いこれらの問題が日本では、

 電車の中吊り広告(新聞の週刊誌広告)とワイドショーによる輿論形成

で、なんとなく雰囲気が醸し出され、総選挙のお祭り騒ぎで決まる。

主権者たる国民が思考停止で主権を行使し、経済的、精神的に苦しい道を
敢えて選ぶのなら、少なくとも私と私の家族は、学習・訓練を通して考察
できるだけの、時間的・経済的・精神的な余裕を持てる人生を過ごせるよう
奮闘努力しよう。

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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です。)
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