寧日雑考 第16号 ハイパーインフレ 2016.08.21
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日銀が建設国債買入や財政出動を続けるとハイパーインフレになる、
という主張をマスコミで見聞する。
そこでハイパーインフレーションについて調べたところ、
説得力のある定義が2つあった。

(1)国際会計基準 3年間で累積100%(年率約26%)の物価上昇
(2)コロンビア大学の名誉教授の故ケーガン氏による定義 月率50%(年率13000%)

(1)は、日本公認会計士協会 の
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/ifrs/summary/index.html

IAS 第29号 超インフレ経済下における財務報告
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/ifrs/summary/pdf/ias_29.pdf
1頁(e)に書かれている。

(e) 3年間の累積インフレ率が、100%に近いか又は100%を超える。

1.26を3乗すれば2.00で丁度2倍。累積100%の物価上昇である。
毎月の物価上昇率に換算すると、1.02の36乗で2.039。
つまり、毎月約2%の物価上昇が3年間継続しなければならない。

前号(寧日雑考 第15号 潜在成長率2%)に書いたとおり、
日銀の異次元緩和3年半で物価上昇は▲0.5%である。
どうやったら、毎月2%の物価上昇を3年間続けられるのだろうか?

(2)はコロンビア大学のPhillip David Cagan氏の紹介ページにある。
Phillip David Cagan
http://econ.columbia.edu/philip-david-cagan-1927-2012

実際の論文は
The Monetary Dynamics of Hyperinflation
http://people.bu.edu/rking/SZGcourse/Cagan.pdf
の25頁の真ん中やや下に次の記載があった。

The term "hyperinflation" must be properly defined.
I shall define hyperinflation as beginning in the month the rise in prices
exceeds 50 per cent and as ending in the month before the monthly rise
in prices drops below that amount and stays below for at least a year.

上手く訳せないのだが、ハイパーインフレーションの定義は、
「毎月50%の価格上昇が少なくとも1年間続くこと」と読める。
1.5を12乗すれば129.74、約130で13000%である。
月50%の物価上昇など、例え1ヶ月ですら、どうやれば起こるのか想像できない。

以上の通り、ハイパーインフレーションの定義を明確にして考えると、
その状況が、いかにとんでもない状況であるのか、が分かる。

物価上昇は、
(ア)財物が無い、又は足りない(貯蓄と衣食住に使う財物)
(イ)財物を生産する能力が無い、又は足りない(生産設備と生産技術)
状況で発生する。

以上の理屈を考えれば、(ア)、(イ)とも十分にある現在の日本で、
ハイパーインフレが起きないことは自明である。
(古いSF 小松左京 氏の「日本沈没」のような天変地異が起きたら別だが)

日本をダメにし続けているのは、主流派経済学、財務省、御用経済学者、
馬鹿経済評論家、無能政治家、マスコミ、そして思考停止状態の主権者だろう。
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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です。)
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