雑考400 第315号 浜岡原発3 2001.10.20
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2001.9.15-16中部電力唯一の浜岡原子力発電所見学バスツアーに倅と共に参加した。厳し
いチェックの後、専用バスで第4号機の建屋へ移動。15人ずつ3グループに分かれ、原子炉
の真上→中央制御室、という見学コースに入った。建物には一切窓が無く、巨大な煙突様
の排気筒を通じて空調している。内部は巨大なコンクリートの固まりと言う感じだ。あま
り感じなかったが原子炉建物内は大気圧より少し低くしており万一の時、建物から外に放
射能物質が漏れないようになっていると言う。放射線の管理区域内に入るときは、放射線
計測装置を携帯し被爆量を計る。また管理区域を出る時は、一人一人放射能検出装置を通
らなければならない。放射能とは放射線を出す物質で、放射能と放射線の関係は、比喩的
に、電灯と光の関係と同じ、と学んだ。つまり(放射能→放射線)≒(電灯→光)である。放
射能が付着するとそこから放射線が放出されるため危険で、特に体内に入った場合は致命
傷になる可能性が大きいらしい。意外だったのは、原子力発電所内の放射線量が少ない事
だ。原子炉の真上に放射線量モニターがあり 0.0005mSv(ミリシーベルト)を指していた。
これは1時間居た場合の値と言う。仮に一年間原子炉の真上に居続けたとして4.38mSv。資
料によれば自然放射線の年間世界平均は 2.4mSvなので2倍に満たない。勿論、事故が起こ
らないことが前提である。因みに最大はブラジルのガラパリでなんと10mSv。また胃のX線
集団検診は1回で0.6mSv。JCO臨界事故で亡くなった方の推定被爆量は16〜20Svだそうだ。

さて、原発の原理・構造・安全対策については概略が解ったが、放射性廃棄物の処理につ
いては、時間の関係もあるためか、殆ど触れられなかった。パンフレットによれば低レベ
ル放射性廃棄物は青森県六ヶ所村に建設される処理貯蔵施設で300年(!)管理すると言う。
これにかかるコストは不明だ。少なくとも今の電気料金には含まれていないと言う。更に
高レベル放射性廃棄物に至っては、最終処分先さえ未解決である。パンフレットによれば
ガラス固化体にした後、六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで冷却のため
30〜50年間 一時的に貯蔵管理し、最終的には地下300メートルの地層に埋設処分するとの
ことだ。いずれにしても放射性廃棄物処理問題は、焦眉の急になりつつある、と感じた。

地球温暖化が問題視されるようになってから、二酸化炭素(CO2) 発生量に限って言えば
建設・運転・廃棄を通して「原発は一番環境に優しい発電」となってしまった。今回の見
学でも強くアピールされていた。逆説的な皮肉を感じる。時代は変わる、の好例だろう。

見学前夜の夕食時、中部電力の引率責任者の方に、作家 高村 薫氏の「神の火」は原発を
攻撃するテロの話だがご存じですか?と聞いた。知らない・読んでない、という返事だっ
た。たかが小説、どのくらい実現可能性があるかは不明だ。しかし「事実は小説よりも奇
なり」ツインタワーが消滅した実例もある。せめて虚構への回答を聞きたい、と思った。

中部電力 浜岡原子力発電所 http://www.chuden.co.jp/hamaoka/

※今回は400字をオーバーしましたが、了承願います。
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黒姫高原 橋本 好次(はしもと よしつぐ)http://member.nifty.ne.jp/monburu/
mail:monburu@nifty.com http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/1755
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( 「雑考400」は、40字×10行の、1分で読める系統立っていない考察や考証です )
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