雑考400 第251号 唯物論とゼニ 2000.11.16
────────────────────────────────────────
『何回も言いますが、意識に存在が先立つ、これが唯物論です 反対に存在に意識が先立
つ、これが観念論であります そこで皆さんに聞いてみたいと思います 地球と人類の誕
生とではどちらが早かったかと言えば、誰だって地球と答えるでしょう このことは人間
が自然を意識する以前に物質的存在、つまり、自然があったということです ですから観
念論は誤りで唯物論が正しい ということであります』以上は、青木雄二 佐高 信の対
談集『「腐れ資本主義」の世を生き抜け』光文社1999.5.30初版1刷発行 197頁からの抜粋
で、青木雄二氏と思われる人物が描かれた1コマ漫画の吹き出しの言葉だ。何とも明快で
分かり易い断定的結論だと感じた。もちろん異論もあると思う。私は未読だが青木氏は、
『ナニワ金融道』の作者で”ナニワのマルクス”と呼ばれているそうだ。サラリーマンは
労働者、マネーはゼニ、と言わないと実感がわかない、馬鹿な労働者は搾取されているこ
とに気づかない、と言う。少し長くなるが、いくつか抜粋する。
45頁『新幹線でも、グリーン車・一般指定・自由席と言うでしょう。そんな言い方じゃ
ほんとはいけないんです。グリーン車を一等、一般指定席を二等、そんで自由席を三等と
ハッキリ言えばええんですわ。「三等席をください」って切符を買いに行けば、「やっぱ
り貧乏人は差別されるんや」と意識するようになる。』
184頁『<略>繰り返しますが、いま日本国民のサラリーマンは、8時間労働をして、その
うちの1時間30分が自分の取り分で、残りの6時間30分を資本に搾取されとる。けど、サラ
リーマンは、まさかそんなひどいことはないと思っているはずですわ』
199頁『日本のサラリーマンは、マルクスを読まんから、労働を売っとると思い込んど
るんですわ。でも、マルクスをちゃんと読むと、労働ではなしに労働力を売っとることが
わかる。アメリカにやられんためにも、まず、そこんところを理解せんと。 労働力がど
ういうもんか言いますと、労働者が会社で一日エネルギーを使ったとしたら、翌日、また
自分を再生産して同じ分のエネルギーを出さなあかん。それが労働力なんです。この労働
力は、自分の家庭で再生産しとるんですわ。 働いて疲れて帰ったら、奥さんにお風呂沸
かしてもろて、一杯晩酌つけてもろて、ええおかずとフルーツも出してもろて、そんでガ
キが「おとうちゃん、今日は算数のテストで90点とったで」とか自慢してくれる。そした
ら労働者は気持ちよおなって、寝て、翌日また働こうという意欲を自分でつくり出す。と
ころが借金したり、博打に手え出したりしたら、夫婦喧嘩になりますでしょう。そうなっ
たら労働力が再生産できないから、家庭が崩壊していきます。たいがいこのパターンなん
ですわ。』
根拠不明の数字や断定口調の強弁も散見されるが、具体的で分かり易く、納得できる部
分も少なくない。氏の講演で、目からウロコが落ちたと言われる事が多い、と言うのも頷
ける。昨今のリストラ(≒馘首)当然の風潮の中、労働者としては、少し勇気づけられた。
※今回は400字をオーバーしましたが、了承願います。
──────────────────────────────────────── |