雑考400 第183号 友だちは必要か? 2000.4.23
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ペネトレ:友だちって、必要だと思うかい?
ぼく:そりゃあ、絶対、必要だよ。ひとりぼっちじゃさびしいじゃん。
ペネトレ:ぼくは友だちなんかいなくたって、ぜんぜん平気だよ。
ぼく:ペネトレは猫だからさ。
ペネトレ:人間だって、ほんとうは、おなじなんじゃないかな。いまの人間たちは、なに
かまちがったことを、みんなで信じこみあっているような気がするよ。それが、いまの世
の中を成り立たせるために必要な、公式の答え(→第1章−10)なんだろうけどね。で
も、その公式の答えは受け入れないこともできるものだってことを、わすれちゃいけない
よ。
ぼく:猫のことは知らないけど、人間は、自分のことをほんとうにわかってくれる人がい
なくては、生きていけないものなんだよ。
ペネトレ:そんなことはないさ。そんな人はいなくたって生きていけるさ。それが人間が
本来持っている強さじゃないかな。ひとから理解されたり、認められたり、必要とされた
りすることが、いちばんたいせつなことだっていうのは、いまの人間たちが共通に信じこ
まされている、まちがった信仰なんだ。
ぼく:そんなことを言ったのはペネトレだけだよ。
ペネトレ:[人間は自分のことをわかってくれる人なんかいなくても生きていけるってこ
とこそが、人間が学ぶべき、なによりたいせつなことなんだ。]そして、友情って、本来
友だちなんかいなくても生きていける人たちのあいだにしか、成り立たないものなんじゃ
ないかな?
ぼく:そんなはなしは、はじめて聞いたよ。
』』』
永井 均=著 内田かずひろ=絵「子どものための哲学対話」1999.6.14第8刷
講談社 62
頁からの引用。一話分全部である。[ ]で括られた部分は原典ではゴシック体で強調さ
れている。3年前に小学校5年生だった「ぼく」とその飼い猫「ペネトレ」の対話だ。一
見、非常に逆説的に聞こえると思う。現代に於いては、特に理解を得にくい主張だろう。
だが変り人の言葉と切り捨てるだけではなく、直視する意志の力も必要だと、私は思う。
※今回は400字をオーバーしましたが、了承願います。
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