雑考400 第101号 元気が出ないとき 1999.10.3
────────────────────────────────────────
『『『

ぼく:友だちとけんかしたときとか、そういう、なにかがっかりするようなことがあって
どうしても元気が出ないとき、どうしたらいいのかな?
ペネトレ:気分とか感情はね、無理におさえこもうとすると心の中でくすぶりつづけるか
らね。ただわすれるのがいちばんいいんだ。
ぼく:そんなこと、できないよ。できないから、元気が出ないんだもん。
ペネトレ:わすれたいのにわすれられないんじゃなくて、ほんとは、わすれたくないん
じゃないかな?[いやなことほど、心の中で何度も反復したくなるし、いやな感情ほど、
それにひたりたくなるんだよ。わすれてしまうと、自分にとってなにか重大なものが失わ
れてしまうような気がするのさ。]いいことや、楽しいことは、それ自体で満ちたりてい
るから、わすれてしまってもぜんぜん平気なんだけど、いやなことのほうは、覚えておい
て、あとで、なにかで埋め合わせをしたいと思うのさ。だから、だれかにいやなことをさ
れたときなんか、その人に対するうらみつらみという形で、そのことを心の中に残してお
きたくなっちゃうんだよ。
ぼく:そういえば、そんな気もする。そういうとき、どうすればいいの?
ペネトレ:自分のやりかたを発明しないとね。そういうことに、自分自身のやりかたを発
明するってことが、おとなになるってことなんだよ。自分に起こるいろんないやなことと
か、不愉快な気分なんかを、自分の中でうまく処理する方法を身につけている人が、ほん
とうの意味でのおとななんだよ。

』』』

永井均=著 内田かずひろ=絵「子どものための哲学対話」1999.6.14第8刷 講談社の50頁
「元気が出ないとき、どうしたらいいか?(1)」からの引用である。[ ]で括られた部分
は原典ではゴシック体で強調されている。本のタイトルどおり、子どもが読めるように、
大きな活字・ひらがな中心・挿し絵豊富・ルビ付きの本だ。上の引用は1対話分すべてで
あり、すぐに読める。全編、3年前に小学校5年生だった「ぼく」とその飼い猫「ペネト
レ」の対話で構成されている。「人間はなんのために生きているのか?」「善と悪を決め
るもの」「へんな仕事の意味」「友だちは必要か?」「青い鳥はいつ青くなったのか?」
など、改めて考えさせられる対話が盛りだくさんである。「子どものための哲学対話」と
いうタイトルだが、私にとっては新鮮な驚きを感じ、また一方では共感を覚えた一冊だ。

※今回は400字をオーバーしましたが、了承願います。
────────────────────────────────────────

黒姫高原 橋本 好次(はしもと よしつぐ)http://member.nifty.ne.jp/monburu/
mail:NBA00155@nifty.ne.jp http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/1755
__________________________________
( 「雑考400」は、40字×10行の、1分で読める系統立っていない考察や考証です )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

トップページに戻る 前のページに戻る