雑考400 第81号 変形三囚人問題 1999.8.15
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第80号に引き続き、市川伸一「考えることの科学 推論の認知心理学への招待」中公新
書104頁から紹介する。副題は「直観的推論の限界付近を探る」とある。『3人の囚人A、
B、Cがいて、2人が処刑され、1人が恩赦になることがわかっている。それぞれが恩赦に
なる確率は、罪の大きさを考慮して、1/4、1/4、1/2 とされ、クジによって恩赦の囚人が
決まった。その結果を知っている看守に対し、囚人A が「BとCのうち、処刑される1人の
名前を教えてくれないか」と頼んだ。看守はかまわないだろうと思い、「囚人B は処刑さ
れるよ」と教えてやった。この返事を聞いたあとの、囚人A が助かる確率はどれだけか。
(ただし、看守はウソをつかないこと、囚人B、Cがともに処刑される場合には1/2ずつの確
率でどちらかの名前を言うことを仮定する)』 この問題は、作者不詳の三囚人問題として
1950年代ころから知られているものの変形版で、考案は東京大学の下條信輔氏と市川伸一
氏だ。オリジナルの三囚人問題では、恩赦の確率がABCとも1/3になっているという。さて
前回同様に、パターンを分けて考えてみると次の3通りあることが分かる。
(1)A恩赦(で看守が)B処刑(と答える)、(2)B恩赦 B処刑、(3)C恩赦 B処刑
それぞれ確率を計算すると、
(1)A恩赦 B処刑 1/4×1/2 A恩赦は1/4、その時看守はB・Cの内1/2で B処刑と回答
(2)B恩赦 B処刑 1/4×0 B恩赦は1/4、その時看守がB処刑と答えることは無い
(3)C恩赦 B処刑 1/2×1 C恩赦は1/2、その時看守はB・Cの内 B処刑と回答するしかない
ここですべてのB処刑の内の(1)の確率を計算すればよい。即ち(1)/((1)+(2)+(3))だ。
計算式は (1/4×1/2)/{(1/4×1/2)+(1/4×0)+(1/2×1)}で結果は何と1/5となる。当
初の恩赦の確率は1/4なのに、看守にB処刑と聞いた事によって確率が 1/5に下がってしま
う。納得できないが計算ではそうなる。この問題は1冊の本になるほど奥が深いそうだ。

※今回は400字をオーバーしましたが、了承願います。
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黒姫高原 橋本 好次(はしもと よしつぐ)http://member.nifty.ne.jp/monburu/
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( 「雑考400」は、40字×10行の、1分で読める系統立っていない考察や考証です )
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