雑考400 第80号 感染者問題 1999.8.15
────────────────────────────────────────
直観と確率計算の違いを実感した問題。市川伸一「考えることの科学 推論の認知心理学
への招待」中公新書97頁から紹介する。『感染者問題 ある国では、男性1000人に1人の
割合で、ある病気に感染しているという。検査薬によって、感染していれば0.98の確率で
陽性反応が出る。但し、感染していない場合でも0.01の確率で陽性反応が出るという。さ
て、今1人の男性に陽性反応が出たとして、この男性が感染者である確率はどれだけか』
著書ではベイズの定理を使って計算しているが、巧く説明できないので自分なりに計算し
てみる。感染・非感染、陽性・非陽性のパターン考えると(1)感染・陽性、(2)感染・非陽
性、(3)非感染・陽性、(4)非感染・非陽性の4つあることが判る。各々確率を計算すると
(1)感染・陽性 1/1000×98/100 1000人に1人が感染しており感染者は98%の確率で陽性
(2)感染・非陽性 1/1000×2/100 感染者でも(1-0.98)=2%の確率で非陽性
(3)非感染・陽性 999/1000×1/100 1000人に999人は非感染者だが1%の確率で陽性
(4)非感染・非陽性 999/1000×99/100 非感染者は(1-0.01)=99%の確率で非陽性
となる。ここで陽性反応が出るのは(1)と(3)であるから、陽性反応全体のうち、感染・陽
性の割合を計算すればよい。式は(1)/((1)+(3))だ。1/1000を0.001の小数にして式を書
くと、0.001×0.98/(0.001×0.98+0.999×0.01) となる。結果は0.08933即ち8.9%の確率
でこの男性は感染している計算になる。再び著書97頁から『この検査薬の精度の高さを考
えると、この男性はかなり絶望的のように思えてしまう。-略-感染している確率が 0.089
であるから、非感染である可能性の方が 1-0.089=0.911で、まだまだはるかに高い。がっ
かりして自殺してしまうことなど、とんでもない。』これは理論計算上の話であり、現実
の検査結果にどのくらい応用が利くかは不明だ。ただ病気によっては何度も検査があると
見聞する。判定が慎重になされているのだとも思う。直観での悲観は早計、の計算例だ。

※今回は400字をオーバーしましたが、了承願います。
────────────────────────────────────────

黒姫高原 橋本 好次(はしもと よしつぐ)http://member.nifty.ne.jp/monburu/
mail:NBA00155@nifty.ne.jp http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/1755
__________________________________
( 「雑考400」は、40字×10行の、1分で読める系統立っていない考察や考証です )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

トップページに戻る 前のページに戻る