寧日雑考 第40号 成功者 2018.07.08
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サラリーマン向けのビジネス誌を眺めると、バリバリ仕事をこなして、
・役員クラスに出世する
・或いは起業して成功する
ことが、自明の目標である記事や特集が多い。
いわゆる「できる男」を目指すという内容だ。

自分もいずれは役員になりたい、だから人心掌握術や効率よく仕事を
片付ける方法、時間活用法などが、繰り返し登場する。
しかし、その目標と結果から言えば、殆どのサラリーマンは成功者にはなれない。

例えば大企業の社長を考える。
社長の在任期間を仮に5年とすると同期が100人なら、5年毎500人毎に1人である。
取締役の定員が5名だとしても、5年毎500人毎に5人だ。
同期が10人だとしても社長となる確率は僅か2%である。

会社勤めの場合、その5年間のために、入社以来ほぼ40年間、会社中心で、
かつ上長への配慮第一の人生を送り続ける可能性が大きい。

一方、起業した場合は、会社が一定規模に成長するまでは、
社長として全責任を持ち、金策に奔走しながら、体調が悪くても休めず、
死にものぐるいで働くことになるだろう。

どちらも私には到底実行できない。だから私は成功者にはなれない。

それでも、これまで程々に楽しく過ごしてきたし、幸運なことに今も
家内安全、小病息災が続き、毎日が面白いので満足している。

少し前だが、2015/11/25産経朝刊の曾野綾子 氏のコラム「透明な歳月の光」に

 人を殺さず、自分も殺さず、会社で決められた仕事を勤め上げ、
 家で家族のためにご飯を作るなどの自分の役割をきちんとこなせれば、
 人を生かすための平凡な人生を送った「大成功」者なのだ。

とあった。なるほどと思う。

私は成功の意味を、富や名誉を伴う自己実現として捉えていた。
しかし曾野 氏は、他者を生かせたことが成功だと言う。

これはとても良い考え方だと思う。

ヒトは社会的な動物で、他者は家族から始まり、友人、同僚、隣近所、
袖すり合う人まで幅広い。だから他者を生かす機会は無数にある。
互いに生かし合えば、皆が成功者という社会が実現する。
これはつまり桃源郷、ユートピアだろう。

 人を殺さず、自分を殺さず、人を生かせれば、人生の大成功者。

物事のとらえ方一つで理想の社会が実現する。これが思想の力だろう。


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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です)
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