寧日雑考 第33号 預金は永遠に不滅です 2017.11.12
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表題は50代以上ならば聞き覚えのある言葉を捩ったものだ。
原典は長嶋茂雄 氏が1974.10.14に行った引退スピーチ、
「我が巨人軍は永久に不滅です」である。
実際の映像もYouTubeで簡単に見ることができる。時代は進んだものだ。

さて「預金は永遠に不滅です」を理解するには、借方/貸方、
つまり複式簿記3級程度の知識が必要である。
簿記は決して難しいものではないが、独特の決まりを持った言語なので
訓練を受けなければ概念すら理解できない。

有り体に言うと、「預金は永遠に不滅です」は、商業高校の卒業生なら
あっさり理解できるが、簿記を知らなければ、東大卒業生でも、
経済学者でも、財務省の役人でも、日経新聞の記者でも、分かり易い解説で
評判のジャーナリストでも、全く理解できないだろう。

そして悲しいかな、日経新聞、財務省、経済学者、そうだったのか!ジャー
ナリストの言動を見れば、上記が事実であることは自明である。

さて、政府が10兆円の国債を発行し、新幹線を作った場合を考える。
登場者は(1)政府、(2)日銀、(3)銀行、(4)企業 とする。(消費税は無視)

仕訳をまとめると次の通りだ。

単位:兆円 

(1)政府

(2)日銀

(3)銀行

(4)企業
国債発行

当座預金10
/国債10

国債10
/当座預金10

仕訳なし

仕訳なし
新幹線完成
小切手で支払

新幹線10
/当座預金10

仕訳なし

仕訳なし

売掛金10
/売上10
政府小切手10※1
/売掛金10
企業が小切手を
銀行に持ち込む

仕訳なし

政府小切手10
/当座預金10
当座預金10
/政府小切手10

政府小切手10
/当座預金10
当座預金10
/政府小切手10

当座預金10
/政府小切手10

※1 政府小切手 http://www.boj.or.jp/about/services/kokko/checkqa.htm/

※1の2 なお、簿記を知っている人間ならば、当座預金=小切手 は常識だが、
ここでは分かり易くするために敢えて「政府小切手」という勘定科目を使った。

※1の3 国債発行時の (2)日銀、(3)銀行 の仕訳を修正した。2020/04/28

仕訳を辿れば結局、新幹線、国債、預金、売上が10兆円ずつ生まれることがわかる。

ここで質問。

問い:新幹線を作った企業の当座預金10兆円はどこに行くのだろうか?

少し考えてもらうために、答えは末尾に記載した。
借方/貸方、つまり複式簿記を知っていれば、預金は単に付け替えされて
いくだけで「預金は永遠に不滅です」であることが分かる。

結局のところ、何が起きているのだろうか? 上にも書いたが、
新幹線、国債、預金、売上が、10兆円ずつ生まれているのだ!

誰か損をした登場人物はいるだろうか?
日本は財政赤字で破綻するだろうか?
日本国債はデフォルト(債務不履行)となるのだろうか?

2017.11.11の日経新聞朝刊によれば、10年国債の金利は0.035%である。
因みにギリシャ国債がデフォルトする直前は30%以上の金利だった。

参考までに、楽天証券HP
 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/gr10yt.html から
2017.11.12時点の主な国の10年国債の金利を書き出せば、

・ギリシャ 5.178%
・アメリカ 2.402%
・ドイツ 0.408%
・フランス 0.782%
・イギリス 1.341%
・スペイン 1.560%
・ポルトガル 2.054%

となっている。

これを見れば一目瞭然、日本国債は桁違いに金利が低い=安全資産 なのだ。
つまり、消費者物価指数の上昇率が2%になるまでは、

 日本国債は打ち出の小槌である

ということだ。

その源泉は何か?

それは、自国でモノを作れる力=国力=国富 である。
国富の源は、優れた人財、優れた技術と設備、安定した社会秩序である。
そして、これを維持するためには、国土の安全と生産性の向上が不可欠である。

・国土の安全には、自然災害や紛争から自国を守る自衛力が必須
・生産性の向上には、人財投資、設備投資、技術投資が必須

日本は、台風が来る度に土砂崩れが発生し人的物的被害が出る。老朽化した
社会インフラ(道路、橋梁、港湾、ダム、上下水道、学校、病院、その他の
公共施設)が増えつつある。
東京一極集中がますます進み、首都直下型の大地震が起きたら日本の機能は
停止してしまう。

10兆円で新幹線を作る時の仕訳  固定資産/国債 と 預金/売上 が、
理解できれば、
預金は永遠に不滅であり、国民経済計算三面等価の原則 生産=分配=支出
が成立することが分かる。

これまでの仕訳に税金などは一切出てこない。つまり消費税10%や
プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化などは、百害あって一利なし、
と言うことだ。

にわかには信じられないだろうが、以上は明確な事実である。
そして繰り返すが、これは、

 借方/貸方 複式簿記

が分かれば誰でも理解できることだ。

結論:自国でモノを生み出せる力を維持することが、国家の繁栄につながり、
   延いては日本が先進国でありつづけることが出来る唯一の道である。

注)今回の仕訳の表はプレーンテキストでは形が崩れる事もあると思う。
その時はこちらのHPを見て欲しい http://www.geocities.jp/monburu/Nzak0033.html

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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です)
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問い:新幹線を作った企業の当座預金10兆円はどこに行くのだろうか?
答え:その企業内、従業員、株主、他の企業(銀行を含む)のいずれか。

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