寧日雑考 第26号 建て付けが悪い 2017.03.26
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言葉は生き物に似て日々変遷するものなので、その使い方はおかしい、
などといちいち目くじら立てることは大人げないと思う。
しかし、数年前から職場の打合せでしばしば耳にする「建て付け」という
言葉の使い方には嫌気が差す。
特に、口先だけは流暢なコンサルタントや専門家がよく使う印象が強い。
最近はそれを真似して、普通の従業員も言い出した。

「これは○○○○という建て付けなので、××××です」

などと使う。
話の流れから想像すると「仕組み」や「筋立て」の意味のようだ。
私に言わせれば、それこそ「建て付けが悪い」使われ方である。

「建て付け」という言葉は「悪い」と一緒に使われることの多い
建築用語と理解している。念のために辞書を引いてみると、

広辞苑第五版
 たて−つけ【立て付け・建て付け】
  (1)戸・障子など建具の開閉の具合。「―の悪いふすま」
  (2)つづけざまにすること。たてつづけ。

日本国語大辞典 精選版
 たて−つけ【立付・建付】
 (1)戸や障子などをしめるとき、柱に接する建具の框(かまち)の部分。
   また、柱や敷居などに対する建具の開閉のぐあい。
 (2)(多く「に」を伴って副詞的に用いる) 物事をたて続けに行なうこと。
  また、物事が連続して行なわれること。

とある。

スマート然としたコンサルタントが字面だけ見て、本来の意味を知らず、
調べもせず、「仕組み」や「筋立て」の代用で使い始めたと推測する。
「建て付け」には洒落た響きがあり、漢字も枠組みや構成を想像させる。
コンサルタントが繰り返し使って、思考力の弱い者が飛びついたのだろう。

私は、「建て付け」のような誤用をリトマス紙として活用している。
他には、欧米語のカタカナ表記、アルファベットの略称、更には
アルファベット略称の簡易読み(IFRSをイファース、ROICをロイックと
読む等)が、リトマス紙である。

これらを頻繁に使う者の言動は、特に注意して観察している。
彼らの考えの浅さがよく分かる。

意地悪をするつもりは毛頭無い。
表面的な見た目の良さや流暢な言葉に騙されないため、
つまりは自衛のためだ。

そして、それは他山の石、反面教師でもある。


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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://zak400.zatunen.com/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした考察です。)
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