寧日雑考 第24号 馬は土曜に蒼ざめる 2017.02.19
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五十代半ば以上の人間にとって通過儀礼と言われる往年の人気
ドタバタSF作家である筒井康隆 氏に表題の短編小説集がある。
絶版になって久しく、amazonで検索すると一番古い出版は、
1975年ハヤカワ文庫の模様である。
生憎詳細を覚えていないので、推測と印象であらすじを書くと、

 交通事故で瀕死の重傷を負った主人公が大手術の末、
 なんとか一命を取り止めた。しかし意識を取り戻した主人公は、
 奇妙な衝動に駆られる。生の人参を見れば何故か無性に喰らい
 付きたくなり、女性に対しては誰彼かまわず見境が無くなる、
 といった具合だ。何故なのだ?と家人に問い詰めると、
 家人はモジモジして言いにくそうに「内臓が滅茶苦茶になった
 主人公を助けるために様々な動物の臓器を移植した」と告白する。
 驚いた主人公は……。

というブラックユーモアで、臓器を提供したそれぞれの動物達の本能・
気質が主人公の意識・態度に表れて大騒ぎになる、という落ちだ。
因みに生殖器は精力絶倫といわれている膃肭臍からの移植だったような
気もする。(その方が面白そうだ)
著者一流の、もし○○だったらどうなるか、という奇想天外な発想を元に、
さもありなんという物語の展開を楽しむドタバタSFだったと理解している。

さて、2017/2/17(金)の日経朝刊で驚きの記事を見つけた。一部抜粋する。
「「「
  「臓器工場」実現なるか
人の膵臓(すいぞう)や肝臓をブタなど動物の体内で作り、病気の治療に使う。
こんな「臓器工場」ともいえる再生医療を目指した研究が進んでいる。
東京大学などの研究チームは1月、種類の異なるネズミを使った実験で
膵臓を作って移植、糖尿病の治療に成功した。
臓器工場が将来、移植用臓器を確保する手段の一つとなり、
人の治療に役立つ日が来るのだろうか。
」」」

記事には、「動物の体内でヒトの臓器を作る」という表題で、
患者のiPS細胞と代理母豚の受精卵でキメラを作り、
ヒトの細胞で出来た臓器を持つ豚を産ませ、その豚の臓器を
患者に移植するというイメージ図もあった。

正に筒井氏が今から40年以上も前に書いた事態である。
また天才科学者にして芸術家のレオナルド・ダビンチ(1452〜1519)は、
ヒトの心臓移植用に豚の心臓が使えると考えていた、と以前に
見聞した覚えがある。本当か嘘か知らないが、ヒトとブタの心臓は
大きさや形が似ているので丁度良いらしい。

凡そヒトが思い付くことはいつかは実現する、という言葉の一例だろう。

記事では倫理の問題が云々などと書かれていたが、登場するのは
患者本人の細胞と動物(家畜)の細胞だけである。
結局は、移植を受ける患者自身の観念の問題だ。
生体臓器移植や脳死臓器移植などよりもハードルは遙かに低い。
ひとたび研究が受容されたならば、実験資源の豊富さから考えると
実用化は想像以上に速い筈だ。

自分が当事者ならどうするか?真剣に悩む時代が来る可能性は高い。
健康体での考えの記録は、いざその時の思案の一助になるかも知れない。

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横浜市 橋本 好次(はしもと よしつぐ)
mail:monburu@nifty.com   http://www.geocities.jp/monburu/
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( 「寧日雑考」は、自由・不定・記録 を方針とした雑文です。)
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